予約制を導入しているのに待ち時間が発生する際の原因と対策を徹底解説。
保険施術が主流のひと昔前の接骨院といえば、患者さまが好きなタイミングで来院して順番を待つ、という運営を採用している院が多くありました。混んでいる時間帯であれば、1時間以上お待たせすることもありましたが、1人あたりの施術時間が短いため、基本的に待ち時間は発生しにくい状況でした。
しかし、短時間、低価格の保険施術から、時間も長く価格帯も高い自費施術を中心とした接骨院が増えたこともあり、ここ数年で「予約制」を導入する接骨院が急増しています。
ただ、予約制を導入した接骨院の中には、待ち時間を減らし、スムーズな運営をするために予約制を導入したはずなのに、「予約制を導入したら、逆に待ち時間が長くなり、クレームが増えた」というお声が寄せられることがあります。
どうして予約制を導入しているにも関わらず、待ち時間が発生してしまうのでしょうか。
予約優先制ってなに?
予約制を導入して待ち時間に対するクレームが起こった、という接骨院の運営を詳しく伺ってみると、共通しているのが「予約優先制」を採用していることです。
予約優先制とは、前日までは予約を受け付け、当日来院された予約をとっていない患者さまは受付順に空いている時間で対応していく運営方法のことです。
予約がとれて便利だという点と、予約をしなくても順番に対応してもらえるという、予約制と受付順番制の利点を併せ持った運用方法に見えるため、まずは優先予約制を導入する接骨院も多いと思います。
実際にこの方法は、比較的患者数が少なく、時間に余裕がある接骨院においては、うまく回る運用方法です。なぜなら、予約者と次の予約者の間に十分な空き時間があるため、予約なしで来院した患者さまの対応も次々とできるからです。
予約なしで来院する患者さまの数が増えるよりも、施術のスピードが速いので、待ち時間が異常に長くなることはありません。
予約優先制の待ち時間が長くなる理由
患者数が少ない接骨院では何の問題もない予約優先制ですが、患者さまの数が増えて、院が忙しくなるにつれて、待ち時間が発生するという落とし穴があります。
予約優先制は、施術時間の少しの誤差で狂いが生じて、待ち時間が異常に長くなってしまうのです。例えば、接骨院の場合、特に新患の方は詳しくヒヤリングをしたり、様々な検査をしたりと、既存の患者さまと比べて所要時間が長い傾向があります。身体の状態を確認してから施術内容が決まることも多いので、どれくらい時間がかかるかが事前に読みにくいという特徴もあります。
予約優先制を導入している接骨院で、20分と予想していた患者さまに30分かかってしまった場合、次々に予約患者の時間が来てしまい、当日来院された患者さまの対応をする時間がなくなってしまうのです。
さらに、いつになれば余裕が出るのかも分からないため、当日来院で待っている患者さまに時間の目安を伝えることもできません。こうなった場合、予約の患者さまが優先と分かっていても、当日来院の患者さまは、いつ自分の番が来るのかとイライラしてくるものです。
すると、予約患者さまの時間であっても当日来院の患者さまを通してしまうなんてこともあるでしょう。すると、今度は予約患者さまから「予約をしている意味がない!」とクレームに発展してしまうという負のループに陥ります。
このように、予約優先制は、一度ほころびが生じると、予約患者さまからも当日来院患者さまからも大クレームが起こりうるというリスクがあるのです。
完全時間予約制を導入しよう
異常に長い待ち時間の発生を回避するためには、「完全時間予約制」に変更するようにしましょう。完全時間予約制とは、「9:00に施術をスタートする30分枠を3人分設ける」など、時間ごとに受け入れ可能な患者さまの人数を決め、すべての患者さまの施術を予約で管理する運営方法です。
予約で管理するといっても、当日来院の患者さまを受け付けないというわけではありません。基本はお帰りの際や電話で次回の予約をとっていただきますが、当日に来院された方には、来院時点でその時間以降の空いている時間枠の予約をとってもらうイメージです。
時間枠を決めてしまうことで、時間に余裕がないのに無理に対応しなければならない患者さまはいませんし、仮に施術が長引いたとしても、待合室にいる患者さま、それぞれに発生している待ち時間をすべて把握できます。
優先予約制では、予約患者さまを優先することで、当日来院した患者さまの順番が変動し続け、異常に長い待ち時間が発生していたのですから、時間や順番があらかじめ決まっていれば、待ち時間の発生は最小限となり、クレームも回避できるでしょう。
集客したいときにも完全時間予約制
また、完全時間予約制を導入することで、集客もスムーズになります。予約優先制で当日になってみなければ、その時間の待ち状況が分からないとなると、事前に空いている時間を患者さまに案内することができません。
完全時間予約制の場合は、予約が入っていなければ必ず患者さまの対応ができるため、メッセージやSNS、電話などで予約空き状況の案内を当日の朝にすることも可能になります。
接骨院の運営していくうえで、新患獲得は大きな課題だと思いますが、今後さらに新患を増やしたいのであれば完全時間予約制を導入することをおすすめします。
もし、あなたが「この近くでおいしいラーメンが食べたいな」と思ったら、どうやってお店を探すでしょうか。おそらく、多くの方がスマートフォンで「梅田 ラーメン屋」などと検索してお店を探すのではないでしょうか。接骨院も同じで、身体に不調を感じた方が接骨院を探すときも、インターネットを利用することが多いでしょう。
美容院やサロンが当日の予約を気軽にインターネットからとれるように、接骨院もインターネットからの予約が可能であることが新患数を左右するとも言われていますが、そもそも時間枠で予約を管理していなければ、インターネットからの予約を受け付けることはできません。
特に、初めて来院される患者さまは、待ち時間が長いだけで院に対してあまり良くない印象を抱きます。まだ信頼関係を築けていない段階で長時間待たされた新患が2度目の来院をしてくれるかどうかは、言うまでもないでしょう。
また、新患を増やしたいのなら、紹介患者数の増加を図りたいところですが、人が何かを紹介をしたくなるのは、「マイナスポイントがないことを前提として」それにプラスで感動する体験やサービスを提供されたときです。
いくら価格が安くても、いくら痛みをとってもらえても、待ち時間が長いというマイナスポイントがある時点で、クチコミや紹介は期待できないのです。新患にリピーターになってもらうためにも、待ち時間が発生しにくい完全時間予約制が懸命だといえるでしょう。
接骨院特有の緊急患者さまに備えよう
美容院やネイルサロンなど、完全時間予約制を導入している他業界の店舗も多くありますが、それらの店舗と接骨院が異なるのは、即時対応しなければならない緊急の患者さまの来院があるということ。
ぎっくり腰、強い捻挫など、緊急性が高い場合でも、事前に電話などで問い合わせていただくことが前提ですが、短時間で応急処置だけでも対応する可能性があることを事前に考慮しておきましょう。
まとめ
「優先予約制を導入した当時はうまくいっていたのに、急に問題が起こりだした」と先生おっしゃる方も多いのですが、そんな先生方に私たちがお伝えしているのは、「それは院として次のステップに進むときが来た」ということです。
前述したように、予約優先制がうまく運用できなくなるのは、患者数が増えてきたときです。完全時間予約制は当日の運用がスムーズになるだけではなく、新患やリピーターの増加にも繋がるなどのメリットもあるので、まだ導入していない方は一度、検討してみてはいかがでしょうか。